9.11

9.11から、7年目の夏。

2001年9月11日
ビン・ラーディン率いる「アル・カーイダ」が
イスラム圏から米国の存在を排除するため
飛行機をハイジャックしてWTCに特攻、民間人2,973人が犠牲に。

米国は「対テロ戦争」として、自衛権を盾に国連の枠外でアフガン侵攻。
ビン・ラーディンを匿っていたとされるタリバンを政権から駆逐。
さらに、自衛権に基づく先制攻撃を容認する「ブッシュ・ドクトリン」を提唱。
大量破壊兵器を隠匿し、アル・カーイダと繋がりがあるとしてイラクに侵攻。
フセイン大統領を拘束し処刑した後も占領を継続。

しかし、7年が経った今もなお、ビン・ラーディンは発見できず
侵攻された2つの国は、いまだ混乱から抜け出す展望すら見えない。

そもそも、テロを「戦争」として位置づけることが正しかったのか?
戦争で攻撃が許されるのは、「戦闘員」と「軍事目標」に対してであり
戦時下であっても民間人を無差別に殺害した場合、それは「犯罪」である。
まして平時下では、たとえ犠牲者数や手段が想像を超えていても
テロは「戦争」などではなく、れっきとした「犯罪」である。

米国のシンクタンク、ランド研究所が出した報告書でも
テロを「戦争」とすることで、「犯罪者」であるはずのテロリストを
「聖戦」を挑む「聖戦士」に祭り上げてしまいかねない点を指摘。
9.11の実行者達は「戦士」ではなく、あくまで「犯罪者」であり
従って「対テロ戦争」ではなく、「テロ対策」として対処すべきと主張している。

この報告書は、1968年から2006年に存在した648のテロ組織を分析
テロ組織が「軍事力」によって終焉を迎えたのは7%であるとし
テロ組織が目的を達成したことによって終結した10%よりも低い。

そして「軍事力」は、あまりにもあからさますぎる手段であり
また「軍事力」の存在は、現地の人々の反感生む危険を指摘。
テロに対する「軍事力」の有効性に疑問を投げかけている。

さらに報告書では、「軍事力」よりも効果の高い戦略として
40%の成果を示した「警察力」および「諜報力」を挙げ
その一例として日本で起きた「地下鉄サリン事件」を分析している。

1995年3月20日
松本智津夫率いる「オウム真理教」が
他で引き起こした事件による警察からの捜査の目を逸らすため
地下鉄内でサリンを散布、12人が死亡および5,510人が負傷。

この事件では、警察の大捜索によって松本および教団関係者が逮捕され
長きに渡った裁判で松本以下、数名の実行犯に死刑判決が下る。

このように国内では「テロ」は「犯罪」として位置づけられており
テロ組織は警察による捜査によって追求されていく。
事件によっては、自衛隊の協力も仰ぐ事態も想定されるが
しかし、あくまでも「テロ対策」の中心は「軍事力」ではなく「警察力」である。

国際テロの場合、テロ組織は「警察力」の弱い国に潜伏する可能性が高い。
警察組織が脆弱な国家があるのなら、共同訓練および情報の共有化など
盤石な組織に強化するような国際協力を進めていかなくてはならない。
国際テロ組織に対抗するには、国際警察ネットワークの向上が不可欠である。

ただ「地下鉄サリン事件」の場合、「オウム真理教」はその後も存続した。
教団は名前を変え、さらに分派も誕生しながら現在も活動を続けている。
たとえ国が解散を強要したとしても、再び集まり活動していくだろう。
これ以上は宗教の自由や集会・結社の自由との兼ね合いもあり
警察組織が容易に立ち入ることは難しく、「警察力」にも限界がある。

そのため、「警察力」の強化および国際協力に取り組むだけではなく
「なぜ」このような団体が生まれ、テロを行おうとするのか
より根源的な問題に取り組んで行かなくてはならない。

この「なぜ」への答えを求めるならば、相手の声に耳を傾ける必要があろう。
テロ組織が活動を終える過程で、最も一般的な形は何か?
先の報告書によると、それは政治路線への転換で48%を占める。
つまり、テロ組織との「対話」も必要であることを、この数字は示している。

根源的な問題に取り組む必要があるのは、米国も同じである。
テロ組織を追うだけではなく、「なぜ」9.11が起きてしまったのか
「なぜ」これほどまで米国は世界から憎まれてきたのか
この問いに目を背け続ける限り、米国はテロの恐怖から逃れることはない。

そしてまた、世界が目を背けたもう一つの「テロ」も忘れてはならない。

2001年10月7日から2002年3月
ジョージ・ブッシュ率いる「アメリカ合衆国」が
ビン・ラーディンを匿うとされるタリバンを駆逐するため
アフガニスタンを空爆、民間人3,000人から3,400人が犠牲に。
マーク・ヘロルド教授の調査から)

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「対テロ戦争」再定義を ランド研究所が報告書(産経新聞 2008.9.11)
Jones, Seth G., and Martin C. Libicki. 2008. HOW TERRORIST GROUPS END: Lessons for Countering al Qa’ida. Santa Monica, Calif.: RAND Corporation

ぼちぼち生きてます。

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